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2008/12/01 Mon *一粒の涙 / Mavis Staples

20081201onlyforthelonley


届けられた一枚の葉書。
心の何処かで覚悟はしていた。
でも目にしたくはなかった報せが届く。

目を瞑る。
煙草の匂い。
柔和な笑顔。
温かな声。
温かな思い。

旅立たれたんですね。
空を仰ぐ。
雲の上から。月の影から。
見えますか。
瞼の裏で。
小さな赤い明りが点滅している。

『Only For The Lonley』'70年リリース。
ステイプル・シンガーズでの活動で知られるメイヴィス・ステイプルスの2ndアルバム。
ステイプル・シンガーズでも中心となってもっとも多くリード・ヴォーカルを担当していたメイヴィスですから。
そのゴスペルで鍛えられた実力は折り紙つきで。このアルバムでも実に素晴しい歌を聴かせてくれています。
熱く、太く、なによりも力強く。それでいて決して必要以上に力んで叫ぶようなことはなく。
聴く者の懐に自然に入って、胸の内を掴んでしまう。そんな温かみのある歌声でもあります。
このアルバムでは本拠地であるスタックス以外にもマスル・ショールズへ出向いての録音も含まれていて。
そのマスル・ショールズで録られたと思われるソウル・バラードの出来が特に素晴しく。
メイヴィスの歌声とマスル・ショールズ・サウンドの相性の良さが後にステイプル・シンガーズの傑作、
『Be Altitude: Respect Yourself』での成功にも繋がったのではないかと思ったりもします。

(以前に書いた『Be Altitude: Respect Yourself』に関する日記はこちらから↓)
http://jumpintacflash.cocolog-nifty.com/decembers_childrenand_eve/2007/02/20070209_fri_5596.html

アレサ・フランクリン等と比較してあまりに知名度の低いメイヴィスですが、是非耳を傾けてほしいなと思います。
そしてこのジャケット。素晴しいジャケットの数多いソウル・アルバムの中でも秀逸な1枚だと思うのです。

一枚の葉書を握り締めて。
覚悟を決めてその扉を開ける。
懐かしい空気の中へ。でも何かが違う。

目を瞑る。
煙草の匂い。
柔和な笑顔。
温かな声。
温かな思い。

本当だったんですね。
辺りを見回す。
レコード棚の影から。カウンターの後ろから。
見てますか。
瞼の裏で。
小さな堤が崩れそうになる。

レコード棚の前に立つ。
几帳面に整理された膨大なレコード。
一枚、一枚ゆっくりと。
眺めていく。
愛情の籠ったディスプレイ。
目に馴染んだ手書きの値札。

あのアルバムも。
あのアルバムにも。
ここで出会ったんだ。
ここで呼ばれたんだ。
そして。
今日もまた。
でも。
カウンターには。
あの笑顔はない。
あの声は響かない。
あの思いは届かない。

一枚のアルバムを抱きしめて。
扉を開けて店の外へ。
堪え切れずに蹲る。
今日も思わぬ出会いがあったのに。
今日も素敵な出会いがあったのに。
そこにはもう。
あなたはいないのだ。

レコードを愛することを。
そこに込められた音楽を愛することを。
そんな思いを共有できることの喜びを。
あなたに。
あなたのお店に。
教えてもらいました。
数え切れない出会いがありました。

ねぇ。
ご主人、親爺さん。
今日もね。
あなたが出会わせてくれたんだね。
ありがとう。
ほんとうに。
今まで。
ありがとう。

大好きだった。
レコード屋さんのご主人、親爺さんとの別れに。
一粒の涙。

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