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2015/12/28 Mon *夢幻、幽玄 / Van Morrison

20151228astralweeksukorg


それが。
何を意味するのか。
それは。
知りようもない。
知る必要もない。

ただ。
幽体離脱するかの如く。
魂が。
肉体を。
置き去りにして。

少し。
離れた位置から。
その様を。
眺めている。
見つめている。

音も。
匂いも。
色も。
薄い膜で隔てられて。
異世界の出来事のようで。

感じることも。
触れることも。
能わず。
思わず。
古いフィルムが再生されている。

フィルムが終わり。
映写機が空回りを始める。
光が絶たれ。暗闇の中へと。
沈んでいく。
その予感だけが、そこにある。

『Astral Weeks』'68年リリース。
ヴァン・モリソンのワーナー移籍後初の、通算2枚目のソロ・アルバム。
レコード会社が用意したスタジオに入ったヴァン。初めて共演するメンバーもいる環境で。
特に明確な指示を出すこともなく。1日で録音を終え、次の1日で編集を終えたと。
つまり。たったの2日間でこのアルバムを制作してしまったのだとか。
スタジオに入る前から明確なヴィジョンがあったのか。
それともスタジオに入ってから感じるままを一気に歌い仕上げたのか。
それは知る由もありませんが。兎に角。2日間でこのアルバムをものにしてしまったと。
そして。当時のヴァンは未だ23歳の若さだったということ。
そこに驚きを隠せないのです。これだけのアルバムを、この期間で、その若さでと。
ロックとも、ソウルとも、ジャズとも呼べない。カテゴライズすることを許さない。
ヴァンにしか創れない、ヴァンの歌声でしか表現できない、音楽がここにあります。
革新的なようでもあり、逆に懐古的なようでもあり。聴く度にその表情を変えてみせる。
どれだけ針を落としても、どれだけ聴いても。同じには聴こえてこない。
複雑な迷路に迷い込んだかのようで。その実、出口への道筋は示されているとも思える。
それを見いだせないのは仕掛けが難解すぎるのか?自分が複雑に考えすぎているのか?
恐らくは。そのどちらもが正解であり、そのどちらもが誤りでもあるだろうなと。
ヴァンにとっての出口への道筋は、結局ヴァンにしかわからない、表現できないもの。
しかしながら。そこに普遍的な道筋を導きだせるものは含まれているのだろうと。
何故ならば。ここまで独創的でありながら。どうしても引き寄せられる魅力がある。
それはヴァンの歌声とその作品には、自分と共通するなにものかの存在があるからだと。
これは。何も自分に限ったことでなく。世界中の音楽を愛する人間には共通するもので。
傑作との名声を得つつも。その難解さ故に、商業的な成功には結びつかず。
それでいながら。カタログから消えることなく。リリース後30年以上経過してから。
ゴールド・ディスクを獲得するに至ったというその特異な扱いと歩みが証明していると。
夢幻、幽玄の世界から現生の自分に語り掛けてくるようなこのアルバム。そして。
ヴァンの歌声は、自分、そして多くの人々にとって永遠の謎にして愛すべきものなのです。

そこが。
何処であるのか。
それは。
わかりようもない。
わかる必要もない。

ただ。
ドッペルゲンガーの如く。
自分から。
別な自分が。
生まれ出でて。

別の。
地平に腰かけて。
自分の姿を。
眺めている。
見つめている。

声も。
姿も。
仕草も。
透明な繭に包まれて。
異次元の出来事のようで。

感じることも。
触れることも。
叶わず。
思いもせず。
客席に座っている。

上映が終わり。
幕が下り。
明かりが灯され。光塵の中へと。
消えていく。
その予感だけが、そこにある。

生の実感。
命の実存。
そこから隔たれ。
そこから放たれ。
傍観者となる。

浮遊して。
離脱して。
膜の向う側。
繭の中。
意識が薄れゆく。

何であろうと。
何処であろうと。
感知しない。
関与しない。
フィルムを眺めている。

フィルムが終わるまで。
幕が下りるまで。
それまでの。
それだけの。
世界の端に腰を下ろして。

記憶の辺土に。
埋没して。
静かに。
安寧に。
眠りにつく。

その中で。
記憶も。
意識も。
総てを。
失うことに。
何の疑問も感じない。

ただ。どこかで。出口を求めてはいるのだろう。



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