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2016/01/17 Sun *電話ボックスの夜 / Albert King

20160117iminaphoneboothbaby


古い話を。

もう。
遥か昔の。
寒い冬の夜。
公衆電話のボックスの中。
十円玉を握りしめて。

何度も。
受話器を。
取っては。
戻してを。
繰り返して。

漸く。
受話器を取って。
番号を。
プッシュしても。
発信する前に受話器を戻して。

そんな。
傍から見たら。
不審な行為を。
何回、繰り返したか。
目を瞑って。意を決して。

反応が無かったら。
出なかったら。
切ればいいのだと。
そう言い聞かせて。
受話器の向こうのコール音に耳を澄ませて。

ガチャ。
もしもし。
あの娘の声。

『I'm In A Phone Booth, Baby,』'84年リリース。
スタックスの倒産に伴いファンタジーへ移籍したアルバート・キング。
電話ボックスに置かれたトレード・マークのフライングVを描いたジャケットが印象的・・・
そんなアルバートのファンタジーでの2枚目となるオリジナル・アルバム。
勘の鋭いブルース・ファンの方ならこのタイトルとジャケットだけでお察しの通りに。
ロバート・クレイの「I’m In A Phone Booth, Baby,」をアルバートがカヴァーしたと。
(このアルバムでの表記は「Phone Booth」となっていますが)
それもアルバム・タイトルにまで冠して。A面の1曲目に配置したこと。
未だ駆け出しだったクレイと、既に大御所だったアルバート。その意外さが話題になったと。
尤も。親分肌でもあり。またスタックスで柔軟にソウルやファンクも取り入れたアルバート。
実のところは、そんなに意外でもなく。アルバート自身は自然にやったことだと思われます。
当然のことながら、同じ曲でもクレイよりは豪快で貫録たっぷりに弾いてみせて。
それでいながら、そのスタイルのモダンさもさり気なく端々に感じさせる辺りは流石で。
言ってみれば。歴戦のつわものならではの余裕としたたかさを同時に感じられるのです。
アルバートにしては珍しく(?)、エルモア・ジェイムスの2曲のカヴァー。
「Dust My Broom」と「Sky Is Cryin'」も収録されていますが。そこはアルバート。
スライドで挑むのではなく、自身の持ち味、武器である変則チューニングのチョーキング。
そいつで、その2曲も聴かせていて。その独特なサウンド、味わいが珍しくも堪らないなと。
ワン・パターンと言えば、ワン・パターンなのでしょうが。それもここまでくると。
それこそエルモアから、クレイまで自らの内に取り込んで咀嚼してしまう。
その強靭な消化力が、アルバートのアルバートたる所以なのだと、感服してしまいます。
まぁ、それが故に。悲しい愛の歌である、「I’m In A Phone Booth, Baby,」が。
振られちまったよ、はっはっはと。笑い飛ばす歌になるのが。どうなのかとも言えますが。
それもまた、ブルースならではの表現ではありますからね。こっちも笑っちゃおうとね。

古い話だ。

もう。
遠い昔の。
凍える冬の夜。
公衆電話のボックスの中。
受話器を握りしめて。

漸く。
耳にした。
あの娘の声に。
上の空で。
相槌を打ちながら。

早く。
要件を切り出そうと。
機会を。
探りながらも言い出せずに。
手に汗して受話器を握りしめている。

そんな。
傍から見たら。
滑稽な姿で。
どれほど、耳を傾けていたか。
目を開いて。意を決して。

答えが無かったら。
断られたら。
吹っ切ればいいのだと。
そう言い聞かせて。
受話器の向こうのあの娘に話しかける。

あのさ。
なに?どうかした。
あの娘の声。

言いたいことは。
伝えたいことは。
胸いっぱいの思いは。
溢れてきているのに。
柄にもなく言葉にならない。

もしもし。
どうしたの。
何か言ってよ。
変だよ。
黙っているなんて。

あの娘の。
唇の動きが。
漏れる吐息が。
目の前に浮かぶ様で。
飲んだ息が吐き出せない。

なんだかな。
似合わないよ。
言いたいことがあるなら。
はっきり言いなよ。
何でも聞くよ。

あの娘の。
長い髪が。
つぶらな瞳が。
熱い唇が。
凛とした姿が見えている。

唾を飲み込む。
いや。
何でもないよ。
またさ。
飲みに行けるといいね。

行けるでしょ。
また皆で集まるって約束したし。
ほら。どこだっけ。
あの店に行ってみようって。
この間も皆で話したじゃない・・・

そう。
皆で。
それでいい。
それでも。
あの娘を失うよりはいい・・・

そう。
言い聞かせて。
じゃぁ、またねと。
電話を切って。
暫く曇るガラスを見ていた。

遥か。
遠い。
昔の。
電話ボックスが普通にあった時代の。
古い話。



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