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2016/06/16 Thu *胸が痛い / Tom Waits

20160616heartattackandvine


胸が痛い。

疼き。
侵され。
鈍く。
深く。
囁きかける。

どうしようもない。
どうにもならない。
だが。
忘れてはいけない。
忘れてはならない。

痛みを。
抑えようとも。
我慢しようとも。
それは。
誤魔化しに過ぎぬと。

そいつは。
してはならぬと。
それでは。
騙されぬと。
訴える。

見詰めるのだと。
対峙するのだと。
望もうと。
望むまいと。
事実から逃れられはしないのだと。

胸が痛い。

『Heartattack And Vine』'80年リリース。
トム・ウェイツの6枚目にしてアサイラムでの最後のアルバム。
酔いどれ詩人なる形容をされることの多いトムですが。
実のところ、その形容が似つかわしいのはアサイラム時代まで。
すなわち。このアルバムまでで。以降はその表現手法の変化が激しいかなと。
実際に、アサイラムと決別したのも次第に実験的になっていくトムの音楽性に関して。
アサイラムが、商業的ではないと難色を示した為だとか。
それを言ったら。そもそも最初から商業的では無い気もしますけどね。
恐らくは。ロック・シンガーとしては。このアルバムでやりたいことはやってしまったと。
トムとしては。そんな心境だったのではないかと思われるのですけどね。
有名な話ですが。私生活にも大きな変化があって。それが名曲を生み出してもいて。
新しい恋人、後の婦人キャスリーンに捧げた「Jersey Girl」がA面のラストで。
別れた恋人、リッキー・リー・ジョーンズに捧げた「Ruby's Arms」がB面のラストと。
アルバムの構成そのものでも重要な位置を占めているのです。
この配置が。普通に考えると逆なのではないかとも、思ったりもするのですけどね。
余談ですが。A面を何で終わらせるか。B面を、全体を何で終わらせるか。
そこまでを考えて制作されているアルバムは、やはりアナログ盤で味わいたいものです。
さて。強面の外見とは異なり。恐らくは繊細な人物であろうと思われるトム。
キャスリーンとリッキー。両人への想いが。胸が痛む、胸を刺す作品、歌声となっていて。
このアルバムでのトムの歌声を耳にした後では。スプリングスティーンは役不足かなとか。
改めてトムの表現力の深さ、素晴らしさに感じ入ってしまうのです。
別に力まなくても。胸の内を晒すことや、抉り取ってみせることはできるのですよね。
故に。針を落とすたびに胸を締め付けられるアルバムなのです。敵わないなぁ。

胸が痛い。

震え。
刺され。
鋭く。
奥底まで。
呟きかける。

どうすることができる。
どうすることもできない。
だから。
逃げてはいけない。
逃げてはならない。

痛みを。
散らそうとも。
相殺しようとも。
それは。
偽りに過ぎぬと。

そいつは。
してはならぬと。
それでは。
隠せないと。
告げる。

向き合うのだと。
追及するのだと。
叶おうと。
叶うまいと。
自分から逃れられはしないのだと。

胸が痛い。

囁きが。
呟きが。
微かでも。
細やかでも。
聞こえる限り。

忘れられない。
逸らせない。
逃れられない。
それが。
自分にとっての事実。

抑えても。
散らしても。
何度でも。いつまでも。
疼き。
震える。

侵され。
刺さり。
深く。
奥底まで。
鈍く。鋭く。

誤魔化しも。
偽りも。
効きはしない。
通用しない。
騙せるわけもない。

知ってしまったら。
感じてしまったら。
想ってしまったら。
もう。
対峙するしか、追及するしかない。

胸が痛い。
胸が痛い。
胸が痛い。
胸が痛い。
胸が、痛い・・・



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