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2017/06/10 Sat *魂の辺土で / Janis Joplin

20170610joplininconcert


恋をせずにはいられない。

わかっている。
駄目なのだと。
無理なのだと。
否、何よりも。
危ういのだと。

そう。
手を伸ばしても。
届く筈も無い。
伸ばした指の先を歩いている。
その差は縮まらない。

そう。
叫んでも。
聞こえる筈も無い。
枯らした声の先で笑っている。
その間は埋まらない。

初めて。
その姿を目にした時。
その声を耳にした時。
瞬時に。
その絶望を理解したのだ。

それでも。
伸ばしてしまう。
叫んでしまう。
追いかけてしまう。
惹かれてしまったのだから。

恋に落ちずにはいられない。

『Joplin In Concert』'72年リリース。
その死後に編集されたジャニス・ジョプリンの2枚組ライヴ・アルバム。
あの『Cheap Thrills』は実は疑似ライヴだとの説が有力らしいので。
ジャニスのライヴ音源としてはこのアルバムが初めて公式にリリースされたもの。
1枚がビッグ・ブラザー・ホールディング・カンパニーとのライヴで。
もう1枚がフル・テイルト・ブギー・バンドとのライヴとなっていて。
その対比、そのどちらの魅力も堪能できる編集となっています。
よく知られる様に。ビッグ・ブラザー・ホールディング・カンパニーは学生ノリで。
その演奏はお世辞にも上手いとは言えなくて。そのぎこちなさが味ではあると。
一方、フル・テイルト・ブギー・バンドは腕利きのミュージシャンの集まりで。
その演奏技術の高さ、奏でられるサウンドのレベルはかなりのものがあると。
どちらを従えて歌うジャニスが好きかと言うのは、昔から色々と言われてきていますが。
ビッグ・ブラザー・ホールディング・カンパニーとのが、楽しそうだと言う声もあれば。
あまりにもジャニスが頭幾つも抜き出ていて。バック・バンドとして機能していないとも。
フル・テイルト・ブギー・バンドをバックにしたジャニスは十二分に実力を発揮していると。
ただ、どうにもその関係がドライで一体感を感じられないと言う声もあったりします。
結論。どちらもいい。どちらでもいい。どちらを従えてもジャニスはジャニスなのです。
このアルバム(に限りませんが)に針を落とすと。いつも感じるのはジャニスの特異性。
そのあまりにも圧倒的で、独特で。そして天性のものとしか思えない唯一無二の歌声。
その心のあり様、そして魂の求めるまま、そのままを歌にしてしまっている様。
特に女性シンガーの例えとしてよく使われるジャニスですが。とんでもない間違いで。
ジャニスはジャニス一人。ジャニスはジャニスでしかないのです。それを痛感するのです。
だから。確かにフル・テイルト・ブギー・バンドのが、力量を引き出していたとしても。
申し訳ないけれど。そんなことは些細なことで。ジャニスが歌っている。それが総てだと。
ジャニスの歌声が聴こえる、それだけで心の中が、魂の辺土が、揺さぶられ、震える。
それは実のところ、恐ろしいことでもあるのだけれど。魅せられずにはいられないのです。ジャニスに恋をせずにはおられないのです。

恋をせずにはいられない。

わかっている。
いけないのだと。
あり得ないのだと。
否、何よりも。
脆いのだと。

そう。
伸ばした手の先は。
何も掴むことは無いと。
伸ばした指は宙を泳ぐだけ。
虚しく泳ぐだけ。

そう。
声を枯らした叫びは。
その背中にも届きはしないと。
枯れた声は宙に響くだけ。
虚しく響くだけ。

初めて。
その笑顔を目にした時。
その歌声を耳にした時。
瞬時に。
その絶望を理解したのだ。

それでも。
伸ばしてしまう。
叫んでしまう。
追いかけてしまう。
魅入られてしまったのだから。

恋に落ちずにはいられない。

手にしたいとも。
得ようとも。
思わない。
手にする、得る。
それだけが総てではない。

勝敗でも。
白黒でも。
ありはしない。
そんなものじゃない。
それを超えるものもある。

届かないなら。
縮まらないなら。
埋まらないなら。
止めておけばいい。
諦めてしまえばいい。

掴めないなら。
泳ぐだけなら。
響くだけなら。
止めておけばいい。
諦めてしまえばいい。

それでも。
その。
絶望を理解しながら。
惹かれてしまったのだ。
魅入られてしまったのだ。

優等生なら。
偽善者なら。
傍観者なら。
何も感じることも無い。
何かを受け容れることも無い。

そんな奴には。
なりたくない。
そんな奴には。
なれもしない。
だから。

声には出さず。
心の中で。
魂の辺土で。
恋をせずにはいられない。
恋に落ちずにはいられない。



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